No.14:同じミスを何度も繰り返す。
「また、同じミスか…」
部下の報告書に赤ペンを入れながら、深い溜息をつく。リーダーであれば、誰もが経験する、あの、やり場のない、徒労感に満ちた瞬間です。 「あれほど、丁寧に教えたはずなのに…」 「もしかして、自分の指導力が低いのか…?」 そんな自己嫌悪に陥ってしまうこともあるでしょう。
かつての僕も、そうでした。部下が同じミスを繰り返すのは、彼らの「能力」や「やる気」の問題だと、本気で考えていました。
しかし、ある時、僕は自分の考えが、根本的に間違っていることに気づかされたのです。部下が同じミスを繰り返すのは、彼らの能力が低いからではありません。僕が、ミスの「本当の原因」を、彼らと一緒に考えてあげていなかったからなのです。
例えば、部下が見積書の計算式を間違えたとします。 多くの凡庸な上司は、「この計算式が正しいから、これを使って」と、「正しい答え」だけを教えてしまいます。これでは、部下はただの「修正作業者」です。根本原因が解決されていないので、また別の場面で、必ず同じ種類のミスを犯します。
では、デキる上司は、どうするのか。 彼らは、答えを教えません。その代わり、たった一つのシンプルな習慣を徹底します。 それは、部下に対して「なぜ、そうなったの?」という問いを、5回繰り返すことです。
「なぜ、計算式を間違えたの?」 「→急いでいたからです」 「なぜ、急いでいたの?」 「→締め切りが迫っていたからです」 「なぜ、締め切りが迫っていたの?」 「→別の緊急の仕事が入ったからです」 「なぜ、別の緊急の仕事に対応できなかったの?」 「→タスクの優先順位が分からなかったからです」 「なぜ、優先順位が分からなかったの?」 「→朝の時点で、今日やるべきことの優先順位を、上司と握っていなかったからです」
どうでしょうか。 ミスの原因は、部下の「計算能力」ではなく、上司と部下の「朝のコミュニケーション不足」という、全く別の場所にあることが分かりました。
ここまで掘り下げて初めて、僕たちは「再発防止策(=朝礼で、タスクの優先順位を毎日確認する仕組みを作る)」にたどり着くことができるのです。
もしあなたが、部下の「繰り返しミス」に悩んでいるのなら、一度、試してみてください。 次にミスが起きた時、すぐに答えを教えるのではなく、ただ静かに、「なぜ?」と問いかけてみる。
その問いこそが、あなたのチームを、「同じ失敗を繰り返す組織」から、「全ての失敗から学ぶ組織」へと、進化させる、魔法の杖になるのです。
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