その絶望の宣告が、本当の人生の始まりだった
「君が担当している事業だが、来月末で撤退することが決まった」
もし、明日、あなたが上司から静かにこう宣告されたら。 長年心血を注いできたプロジェクトが、突然終わりを告げられたら。 あなたの仕事が、会社から、社会から、きれいさっぱりなくなるとしたら。
あなたには、一体、何が残るでしょうか?
会社の肩書き。会社の立派な机。会社がくれたパソコンと携帯電話。会社の仲間との人間関係。 その全てを失った時、あなたという人間の「価値」は、一体何によって証明されるのでしょうか。
これは、決して他人事ではありません。事業の選択と集中、M&Aによる組織再編、AIによる業務の代替…。現代のビジネス環境はめまぐるしく変化し、昨日まで安泰だと思われていた仕事が、明日にはなくなる可能性は誰にでもあります。
担当事業の縮小や撤退が決まったチームには、言いようのない不安と無力感が渦巻きます。
「自分たちの努力は、すべて無駄だったのか」「会社に切り捨てられた」「これからどうなるんだろう…」。メンバーの士気は地の底まで落ち、オフィスはまるで葬式のような重い空気に包まれる。
かつての私も、この問いに答えることができませんでした。会社という名刺がなくなった時、自分には価値あるものなど何も残らないのではないかと、心の底から本気で怯えていました。
しかし、ある事業撤退という絶望的な経験を通じて、私は一つの揺るぎない真実にたどり着いたのです。
それは、会社は、私たちの「仕事」や「役職」を奪うことはできても、私たちがその仕事を通じて得た「経験」と「スキル」を奪うことは絶対にできない、ということです。
あなたが、その事業で流した汗と涙。 あなたが、困難な交渉の末に築き上げた、顧客との信頼関係。 あなたが、幾度もの失敗を乗り越えて身につけた、粘り強い問題解決能力。
それらは、会社の所有物ではありません。他の誰にも奪うことのできない、あなた個人の、かけがえのない「資産」なのです。
この記事では、事業撤退やリストラなど、「仕事がなくなる」という深刻な不安に直面しているすべてのビジネスパーソン、そして、そうした状況で部下たちの動揺に心を痛めるリーダーに向けて、この危機を乗り越え、自らの本当の価値を発見し、キャリア自律への力強い一歩を踏み出すための具体的な思考法とアクションプランを、私の実体験を交えながら徹底的に解説します。
この絶望的な宣告は、終わりではありません。それは、会社の看板に依存した偽りの自分と決別し、「個」としての本当の人生を始めるための、ゴングなのです。
第1章:なぜ私たちは「仕事がなくなること」をこれほど恐れるのか?
「仕事がなくなる」という事態は、単に収入源を失うという経済的な問題にとどまりません。それは、私たちの存在そのものを揺るがす、複合的で根源的な恐怖を引き起こします。この恐怖の正体を正確に理解することが、不安を乗り越えるための第一歩です。
1. 「会社の名刺=自分」というアイデンティティの喪失
「〇〇商事の田中です」 私たちは、ビジネスの場面で当たり前のようにこう自己紹介します。しかし、この「会社の名刺」に頼りすぎる生き方は、非常に脆い土台の上に成り立っています。長年、一つの会社に勤めていると、いつの間にか「会社の評価」と「自分自身の価値」を同一視してしまう傾向があります。
- 会社アイデンティティへの過度な依存:「〇〇社の部長」という肩書きが、自分のアイデンティティそのものになってしまう。会社のブランドや業績が、まるで自分の手柄であるかのように感じられ、それが自尊心を支える柱となります。
- 終身雇用が育んだ「会社人間」:かつての日本型雇用システムは、企業への忠誠と引き換えに安定を保証するものでした。この環境下で、「会社のために滅私奉公する」ことが美徳とされ、多くの「会社人間」を生み出しました。しかし、その結果、会社の外では通用しない、極めて依存的なキャリア観が染み付いてしまったのです。
この状態に陥っていると、いざ会社の看板がなくなった時、「自分には何もない」という深刻なアイデンティティ・クライシスに直面します。「自分とは何者なのか?」という問いに答えられなくなり、深い無力感と自己肯定感の喪失に苛まれることになるのです。
2. 生活基盤が崩壊する「経済的な不安」
もちろん、現実的な経済的な不安は、私たちの心を蝕む最も直接的な要因です。
- 固定費という名のプレッシャー:住宅ローン、子どもの教育費、親の介護費用…。年齢を重ねるごとに、私たちの肩には様々な経済的責任がのしかかります。収入が途絶えることは、家族の生活を直接脅かすという、極めて現実的な恐怖です。
- 再就職への懸念:特にミドルシニア層にとっては、「この年齢から、同じ条件で次の仕事が見つかるだろうか」「自分のスキルは、他の会社でも通用するのだろうか」という不安は深刻です。年齢という抗いがたい要因が、挑戦への足かせとなってしまうのです。
この経済的な不安は、私たちの判断力を鈍らせ、冷静なキャリアプランニングを妨げます。「とにかく早く次の仕事を見つけなければ」という焦りが、本質的でない選択へと導いてしまう危険性もはらんでいます。
3. コミュニティを失う「社会的な孤独感」
多くのビジネスパーソンにとって、会社は単にお金を稼ぐ場所ではありません。一日の大半を過ごし、喜怒哀楽を分かち合う、最も主要なコミュニティです。
- 人間関係の喪失:仕事がなくなるとは、毎日顔を合わせていた上司、同僚、部下との日常的な繋がりを失うことを意味します。励まし合ったり、時には愚痴を言い合ったりする仲間がいなくなることで、社会から切り離されたかのような強い孤独感に襲われることがあります。
- 帰属意識の喪失:「自分は〇〇社の一員である」という帰属意識は、私たちに安定感と社会的な役割を与えてくれます。それを失うことは、自分が社会の中で漂流する孤独な存在になってしまったかのような感覚を引き起こすのです。
4. 未知への「変化」そのものに対する根源的な恐怖
人間は本能的に、現状を維持しようとする生き物です。慣れ親しんだ環境(コンフォートゾーン)にいると安心感を覚えますが、そこから強制的に引き剥がされることには、強いストレスと恐怖を感じます。
- 失うことの痛み:新しいものを得ることの喜びよりも、今あるものを失うことの痛みの方が、心理的には2倍以上大きく感じられると言われています(プロスペクト理論)。慣れ親しんだ仕事内容、通勤路、オフィスの雰囲気、人間関係…。それらすべてを一度に失うという変化は、私たちの心に大きなダメージを与えるのです。
これらの「アイデンティティ」「経済」「人間関係」「変化」という4つの恐怖が複雑に絡み合い、私たちの心を支配します。しかし、これらの恐怖はすべて、「自分の価値の源泉を、会社の内部に置いている」ことから生じています。次章では、その価値の源泉を、会社の外、つまりあなた自身の内に取り戻すための思考法を解説します。
第2章:「会社が与えた船」と「あなた自身の航海術」を切り分ける思考法
会社の事業撤退という荒波に飲み込まれそうになったとき、私たちはパニックに陥り、すべてを失ったかのように感じてしまいます。しかし、ここで冷静に、自分に残されたものを分析する必要があります。そのための強力な思考のフレームワークが、「船」と「航海術」を切り分けるという考え方です。
あなたが乗っていた「船」とは何か?
「船」とは、会社があなたに提供してくれていた、あらゆる有形無形のプラットフォームのことです。
- 会社のブランド・信用力:「〇〇社です」と言えば、話を聞いてもらえた信用力。
- 資本・インフラ:立派なオフィス、最新のPC、経費で使える予算。
- 組織・仕組み:営業、開発、経理、人事といった、あなたを支えてくれた組織機能。
- 肩書き・役職:「部長」「課長」といった、権限を与えてくれたポジション。
- 商品・サービス:あなたが売っていた、あるいは開発していた、競争力のある製品。
- 顧客リスト・人脈:会社が長年かけて築き上げてきた、取引先との関係。
これらはすべて、素晴らしいものです。しかし、重要なのは、これらはあくまで「借り物」であるということです。会社の業績が悪化したり、経営方針が変わったりすれば、いつでも取り上げられる可能性がある。会社が与えてくれた船は、ある日突然、沈んでしまうかもしれないのです。
あなたが身につけた「航海術」とは何か?
一方で、「航海術」とは、その船の上での経験を通じて、あなた自身の身体に刻み込まれた、誰にも奪うことのできない能力のことです。これこそが、あなたの本当の価値であり、生涯にわたってあなたを支える「資産」となります。 この航海術は、**「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」**と言い換えることができます。ポータブルスキルは、特定の業界や職種に縛られず、どんな環境でも通用する汎用的な能力です。大きく分けて「仕事のし方」と「人との関わり方」の2種類があります。
1. 仕事のし方(対課題処理能力) これは、目の前の課題やタスクをいかに効率的・効果的に処理していくかというスキルです。
- 現状分析:複雑な状況の中から、問題の本質を見抜く力。
- 課題設定:解決すべき「正しい問い」を立てる力。
- 計画立案:ゴールから逆算して、現実的なステップとスケジュールを組む力。
- 実行力:計画倒れに終わらせず、泥臭く最後までやり遂げる力。
- 改善・最適化:PDCAサイクルを回し、常にやり方を改善していく力。
具体例: あなたが担当していた事業で、「売上が低迷している」という課題があったとします。その時、あなたは、
- 顧客データや市場を分析し、
- 「新規顧客の獲得」ではなく「既存顧客の単価向上」こそが問題の核心だと課題を設定し、
- アップセル・クロスセルのためのキャンペーンを計画し、
- 営業チームを巻き込んで実行し、
- 結果を分析して次の施策を改善した。 この一連の経験そのものが、あなたの強力な「航海術」なのです。
2. 人との関わり方(対人能力) これは、他者を巻き込み、協力を得ながら、組織として成果を最大化していくためのスキルです。
- 傾聴力・共感力:相手の言葉の裏にある本音や感情を理解する力。
- 交渉力・説得力:利害の異なる相手と、Win-Winの合意形成をする力。
- リーダーシップ:ビジョンを示し、チームを一つの方向に導く力。
- マネジメント:部下の能力やモチベーションを引き出し、育成する力。
- ファシリテーション:会議などで、多様な意見をまとめ、結論に導く力。
具体例: 事業撤退が決まった後、混乱するチームメンバーと1on1を実施し、
- 一人ひとりの不安や不満に耳を傾け、
- 会社の人事部と交渉し、
- 「我々のミッションは、最後までお客様に迷惑をかけず、この事業をきれいに終わらせることだ」とリーダーシップを発揮し、
- メンバーのスキルセットを考慮して、次のキャリアに繋がるような最後の業務を割り振った(マネジメント)。 これもまた、会社の命令ではなく、あなた自身の人間力によって成し遂げた、貴重な「航海術」と言えるでしょう。
失敗談こそが、最高の「海図」になる
重要なのは、成功体験だけが資産ではない、ということです。むしろ、大きな失敗から何を学び、それをどう乗り越えたかという経験こそが、あなたの航海術をより深みのあるものにします。 「あの時、市場の読みを誤ったから、次はもっと多角的な情報収集をしよう」 「部下とのコミュニケーション不足でプロジェクトが炎上したから、次は週次の1on1を徹底しよう」 失敗から得た教訓は、次に同じ過ちを繰り返さないための、あなただけの貴重な「海図」となるのです。
会社が与えてくれた船は、沈むかもしれません。しかし、あなたには、その船で培った「航海術」と、失敗から学んだ「海図」が残っている。それさえあれば、あなたはどんな新しい船に乗り換え、どんな新しい未知の海へも、再び漕ぎ出していけるのです。
第3章:あなたの本当の「価値」を発見する!キャリアの棚卸し完全ガイド
「自分にも航海術があることは分かった。でも、それが具体的に何なのか、うまく言葉にできない」 多くの人がそう感じるはずです。そこで、ここからは、あなたという船長が持つ、唯一無二の「航海術(ポータブルスキル)」と「海図(経験からの学び)」を明確に言語化するための、具体的なワークショップ、「キャリアの棚卸し」の進め方をご紹介します。ぜひ、ノートとペンを用意して、時間をとって取り組んでみてください。
ステップ1:過去の航海記録を洗い出す(経験の可視化)
まずは、記憶の海に潜り、これまでのキャリアで経験してきたことを、事実ベースで客観的に洗い出します。
- キャリア年表の作成
- ノートの左側に、入社から現在までの年次を書き出します。
- 各年次で、「所属部署」「役職」「担当した主なプロジェクトや業務内容」を箇条書きで書き出していきます。
- 思い出せる限り、具体的に書くのがポイントです。(例:「2020年 営業2課 課長 / 新規事業Aの立ち上げリーダー / 中部エリアの売上〇〇円達成」など)
- STARメソッドでエピソードを深掘りする キャリア年表で書き出した主要な業務やプロジェクトの中から、特に印象に残っているものをいくつか選び、世界標準のフレームワークである**「STARメソッド」**を使って深掘りします。
- S (Situation / 状況):それは、どのような状況でしたか?(背景、課題、チーム構成など)
- T (Task / 課題・目標):その状況で、あなたに課せられた課題や目標は何でしたか?
- A (Action / 行動):その課題・目標に対し、あなたは具体的にどのような行動を取りましたか?
- R (Result / 結果):あなたの行動の結果、どのような成果が生まれましたか?(定量的・定性的な結果)
- S(状況):担当していた製品Bの市場シェアが、競合製品Cの登場により、半年で15%から10%に低下。チームの士気も下がっていた。
- T(課題):3ヶ月以内にシェアを12%まで回復させるという目標が課せられた。
- A(行動):まず、既存顧客30社にヒアリングを行い、競合製品Cに乗り換えた理由を徹底的に分析。価格ではなく「サポート体制への不満」が根本原因であることを特定した。そこで、開発部と連携し、専門のサポートチームを2名体制で新設。自身もプレイングマネージャーとして、主要顧客10社を直接訪問し、新しいサポート体制を説明して回った。
- R(結果):3ヶ月後、解約率は前四半期比で50%減少し、シェアは13%まで回復。顧客満足度アンケートのスコアも平均3.5から4.2に向上した。
ステップ2:経験から「航海術」を抽出する(スキルの言語化)
ステップ1で書き出したエピソードから、あなた固有の「航海術(ポータブルスキル)」を抽出していきます。
- 行動(Action)からスキルを特定する STARメソッドの「A(行動)」に注目し、その行動の裏にあるスキルを言語化します。
- 先の例で言えば…
- 「顧客ヒアリングを行い、根本原因を特定した」→ 現状分析力、課題発見力、傾聴力
- 「開発部と連携し、サポートチームを新設した」→ 部門間調整力、企画・立案力、実行力
- 「主要顧客を訪問し、説明して回った」→ プレゼンテーション能力、交渉力、関係構築力
- 先の例で言えば…
- ポータブルスキル・チェックリストの活用 第2章で紹介した「仕事のし方」「人との関わり方」のスキルリストを参考に、自分のエピソードがどのスキルに該当するかをチェックしていくと、より網羅的に自分の能力を把握できます。
ステップ3:自分の「羅針盤」を発見する(強みと価値観の言語化)
スキルを抽出したら、次は、あなたがどのような船長なのか、その特性と「どこに向かいたいのか」という意志を明確にします。
- 強みの特定:抽出したスキルの中で、特に高い成果に繋がったもの、使っていて楽しかった・自然にできたもの、他人から「すごいね」と褒められたものは何ですか?それらをグルーピングし、「私の強みは、〇〇という課題に対して、△△というアプローチで解決に導くことだ」というように、再現性のある強みとして言語化します。
- 価値観(Will)の発見:これまでのキャリアを振り返り、「どんな瞬間に、最もやりがいや喜びを感じましたか?」と自問してみてください。
- チームで目標を達成した時?
- 顧客から「ありがとう」と言われた時?
- 誰もやったことのない新しい仕組みを創った時?
- 部下の成長を実感した時? その答えが、あなたのキャリアの「羅針盤」となる、**大切にしたい価値観(Will)**です。
ステップ4:次の航海計画を立てる(ネクストアクションの設定)
自分の「航海術(スキル)」と「羅針盤(価値観)」が明確になったら、いよいよ次の航海計画を立てます。
- Can / Will / Mustの整理
- Can:自分にできること(スキル、強み)
- Will:自分がやりたいこと(価値観、興味)
- Must:自分がやるべきこと(市場のニーズ、会社の要請) この3つの円が重なる領域こそが、あなたが次に目指すべきキャリアの方向性です。
- 具体的なアクションプランに落とし込む その方向性を実現するために、明日からできる小さな一歩を考えます。
- 情報収集:興味のある業界で働く知人に話を聞いてみる。
- 学習:不足しているスキルを補うために、オンライン講座に申し込む。
- 発信:自分の経験やスキルをSNSやブログで発信してみる。
- 試行:副業として、自分のスキルを試してみる。
この棚卸し作業を通じて、あなたは「〇〇社の田中」ではなく、「□□という強みと、△△という価値観を持った、田中という名の、一人のプロフェッショナル」として、自分自身を再定義することができるのです。
第4章:リーダーとして、不安に揺れる船をどう導くか?
ここまでは、個人のサバイバル術について語ってきました。しかし、もしあなたがリーダーであるならば、自分だけでなく、不安に揺れるチームメンバーという「乗組員」を守り、導くという、もう一つの重要な使命があります。
1. 嵐の中で、まず「安全な港」になる
事業撤退という嵐の中で、メンバーは激しく動揺しています。この時、リーダーが精神論で「頑張れ!」「前を向け!」と叫んでも、誰の心にも響きません。まずやるべきは、彼らが安心して感情を吐き出せる「安全な港」になることです。
- 徹底的な傾聴:1on1の時間を設け、「今の率直な気持ちを聞かせてほしい」と、とにかく話を聞くことに徹します。怒り、悲しみ、不安、不満…どんなネガティブな感情も、決して否定せず、「そう感じるのは当然だ」と受け止め、共感を示します。メンバーは、自分の感情が受け止められたと感じることで、初めて冷静さを取り戻すことができます。
2. 「我々の航海術」の棚卸しをチームで行う
メンバーの心が少し落ち着いたら、第3章で紹介した「キャリアの棚卸し」を、チームの公式なワークショップとして実施することを提案します。
- 目的の共有:「この事業は終わるかもしれない。しかし、我々がこの事業を通じて身につけた経験とスキルは、誰にも奪えない我々自身の財産だ。今日は、その財産がどれだけ価値あるものか、全員で確認しよう」と、ポジティブな目的を伝えます。
- 相互リスペクトの醸成:ワークショップを通じて、メンバーは自分自身のスキルだけでなく、同僚の知られざる経験や強みを知ることになります。「〇〇さん、そんなすごい経験してたんだ」「△△さんのあのスキル、うちのチームの宝だったな」と、お互いの価値を再認識し、リスペクトし合う文化が生まれます。これは、チームの絆を強め、最後まで一体感を保つ上で極めて効果的です。
3. 次の「船」への、責任ある橋渡し
リーダーの最後の、そして最も重要な仕事は、乗組員たちを次の「船」へと責任を持って送り届けることです。
- 最後のミッションの意味付け:撤退が決まった業務のクロージングを、単なる「敗戦処理」ではなく、「我々のプロフェッショナルとしての誇りを懸けた、最後の共同作業」として意味付けします。お客様や関係者に最大限の誠意を尽くし、きれいに事業を終わらせる経験は、必ずやメンバーの次のキャリアに繋がる貴重な実績となります。
- 具体的なキャリア支援:メンバー一人ひとりの「航海術(スキル)」と「羅針盤(価値観)」を深く理解した上で、彼らが次に活躍できそうな社内の部署やプロジェクトを、人事部と連携して探します。時には、彼らの強みを推薦状としてまとめ、次の上司にプレゼンすることも厭わない。この具体的な支援こそが、リーダーへの最後の信頼を決定づけます。
この困難な状況で、リーダーが誠実で責任ある行動を示せるかどうか。メンバーは、あなたのその背中を一生忘れないでしょう。
【まとめ】名刺を破り捨て、本当の航海に出よう
もし、あなたが今、自分の仕事がなくなるという不安に苛まれているのなら。 一度、あなたの「名刺」を、心の中で破り捨ててみてください。
そして、静かに問い直すのです。 「この会社の肩書きがなくなった時、自分に残る、本当の価値とは、一体何だろうか?」と。
その問いと真摯に向き合い、あなた自身の「航海術」と「羅針盤」を発見するプロセスこそが、「会社依存」という名の、居心地は良いが沈むかもしれない客船から降り、自らの意志で人生という大海原を漕ぎ出す、独立した航海士としての、本当のキャリアの始まりなのです。
「仕事がなくなる」という絶望的な宣告は、あなたを沈ませるための嵐ではありません。 それは、あなたを縛り付けていた鎖を断ち切り、あなたを本当の自由へと解き放つための、神様からの、少し手荒い贈り物なのです。
その贈り物を受け取った時、あなたの本当の航海が始まります。
「BONDS-METHOD」の全体像や、今回ご紹介した以外の思考法について、さらに詳しく知りたい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。あなたのマネジメントや働き方を、根本から変えるヒントがここにあります。
- BONDS-METHOD記事への誘導: BONDS-METHODの全体像や思想についてさらに詳しく知りたい読者のために、以下の記事へのリンクを設置します。
- ブログ記事: (https://quadkinghd.com)
note記事:https://note.com/embed/notes/nee2435a4f8e6
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