年収1000万円に近づいたら検討したい節税対策
年収が1,000万円以上の方が節税対策を検討する際には、収入の大きさに応じた戦略が必要です。以下に、一般的な節税方法や各種控除を紹介しますが、個々の状況に合わせて専門家と相談することが重要です。
所得控除の活用:
- 住宅ローン控除: 自宅の住宅ローン利息については、一定の金額まで所得控除が受けられる場合があります。
- 保険料控除: 生命保険や医療保険の掛け金に対する所得控除も検討できます。
- 寄付金控除: 寄付金を行った場合、一定の金額まで所得控除を受けることができます。
個人年金保険の活用:
- 個人年金保険に加入し、一定額を支払うことで、将来の年金受給額を減らすことができ、税金を節約できる場合があります。
事業収入の分散:
- 複数の収入源を持つことで、所得を分散させ、各種控除を最大限に活用することができます。例えば、株式投資や不動産投資を検討することが考えられます。
税制優遇措置の利用:
- 特定の産業やプロジェクトに投資し、税制優遇措置を利用することで、税金を軽減できる場合があります。たとえば、新しい事業への投資税制優遇措置などがあります。
節税アドバイザーとの協力:
- 高所得者向けの節税方法は複雑であり、税制改正によって変化することがあるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。税理士やファイナンシャルプランナーと連携し、最適な節税戦略を策定しましょう。
遺産プランニング:
- 遺産税対策として、資産の贈与や遺産分割の計画を立てることができます。これにより、将来的な遺産税の軽減が可能です。
海外所得の管理:
- 海外での収益に関する税金や報告義務について、適切な管理を行いましょう。国際的な税務ルールを遵守することが重要です。
節税対策は個人の状況に大きく依存します。高収入者は複雑な税制を持つことが多いため、専門家の助言を受けつつ、最適な戦略を検討することが賢明です。また、税法は変更される可能性があるため、最新情報を確認することも重要です。
サラリーマンの年収1,000万円以上になった場合、または、年収が大きく増えた場合、所得税の税率が高くなるので、少しでも税金を抑えるためには節税対策が必要です。
サラリーマンが実施できる節税の方法として、ふるさと納税、各種所得控除の利用、iDeCo、NISA、不動産投資など、節税方法は複数ありますので、詳しく解説していき、自身での対応ができているのかもチェックしていきたいと思います。
本記事では年収1,000万円以上の人ができる節税方法を紹介し、不動産投資のメリットも解説します。
年収1000万円のサラリーマンの生活基準は?
年収1,000万円と聞くと高年収で、生活に余裕があると思うかもしれません。
しかし、給与所得は課税所得金額に応じて税率が上昇する「超過累進税率」という方式が採用されており、所得が多くなるほど税率が上がる仕組みです。そのため、年収が上がったとしても実際にはもらえる金額があまり増えないと感じるようになります。
年収1,000万円以上となると税金はかなり高額になるため、節税対策が必要になります。
年収1000万円の所得税・住民税はどのくらいになるのでしょうか?
年収1,000万円のサラリーマンの所得税・住民税がどのくらいになるのかケースごとに確認していきましょう。年収1,000万円は高額な税金がかかりますが、世帯の状況でかなり異なることをお伝えします。
シミュレーションは最低限の控除のみで計算した結果であり、ほかの控除を利用することでさらに税額は下がります。また、税率などは適宜変更になりますので、あくまでも参考程度の金額としてどの程度の支払いになるのかを掴むための数字になります。
年収1,000万円の所得税・住民税
年収1,000万円の所得税・住民税は、単身世帯と夫婦の世帯で異なります。
配偶者が専業主婦(夫)の場合は配偶者控除が加わるため、より節税が可能です。
また、夫婦の場合でも、片働きと共働きで世帯年収が1,000万円になる場合とでは、税額の計算が違ってきます。
単身と夫婦世帯に分け、所得税・住民税がどのくらいになるのかシミュレーションしてみましょう。
サラリーマンの給与所得は、年収から各種控除を差し引いた金額を課税所得として税額を計算します。
基本的に年収から控除されるのは、以下の控除です。
・給与所得控除
・社会保険料控除
・基礎控除
給与所得控除は年収により控除額が定められており、年収850万円以上の場合に控除できる額は上限の195万円です。
社会保険料控除は健康保険や厚生年金保険など1年間に支払った社会保険の合計額で、全額所得から差し引くことができます。
年金基金の保険料も含まれ、金額は個人により異なります。
基礎控除は、合計所得が2,400万円以下の場合は一律48万円となり、住民税については43万円です。
年収1,000万円の人の所得税・住民税について、以下の控除額と仮定して計算してみましょう。
単身で年収1,000万円の場合の所得税・住民税
給与所得控除:195万円
社会保険料控除:130万円(想定)
基礎控除:48万円(住民税は43万円)
所得税
1,000万円−(195万円+130万円+48万円)=627万円
課税所得額は627万円であるため、所得税の税率は20%、控除額427,500円となります。
所得税の計算は「627万円×20%−42万7,500円=82万6,500円」となり、単身の場合の所得税は82万6,500円です。
住民税
住民税は基礎控除が43万円となるため、課税所得は以下のとおりです。
1,000万円−(195万円+130万円+43万円)=632万円
住民税の税率は一律10%であり、単身の場合の住民税は63万2,000円となります。
単身で年収1,000万円の人が支払う税金の合計は、所得税82万6,500円+住民税63万2,000円=145万8,500円です。
夫婦で世帯年収1,000万円の場合の所得税・住民税
夫婦で世帯年収が1,000万円の場合、片働きと共働きで税額が異なります。
【片働きの場合】
まず、夫婦の一方が働き、もう一方が無職の専業主婦(夫)の場合、配偶者控除が加わります。
給与所得控除:195万円
社会保険料控除:130万円(想定)
配偶者控除:13万円
基礎控除:48万円(住民税は43万円)
課税所得を求める計算は、以下のとおりです。
1,000万円−(195万円+130万円+13万円+48万円)=614万円
課税所得額614万円の所得税率は20%、控除額427,500円です。
所得税
「614万円×20%−42万7,500円=80万500円」となり、所得税は80万500円です。
住民税
1,000万円−(195万円+130万円+13万円+43万円)=619万円
619万円×10%=61万9,000円
住民税は61万9,000円で、所得税80万500円と合わせた税額は141万9.500円です。
片働きの世帯は配偶者控除があるため、単身よりも節税ができます。
【共働きの場合】
共働きで合計の年収が1,000万円の場合、それぞれの税額を計算する必要があります。例えば、夫婦それぞれが500万円の年収を得ていると仮定します。
年収500万円の各種控除は以下のとおりです。
給与所得控除:500万円×20%+440,000円=144万円
基礎控除:48万円(住民税43万円)
社会保険料控除:72万円(想定)
課税所得は「500万円-(144万円+48万円+72万円)」=236万円です。
所得税
課税所得236万円の所得税率は10%(控除額9万7,500円)で、所得税は「236万円×10%−9万7,500円=13万8,500円となります。
住民税
「500万円-(144万円+43万円+72万円)」=241万円の10%のため、24万1,000円です。
結果、夫婦合わせた税金は、合計75万9,000円となり、単身や片働きよりも大幅に税額が低くなる結果となりました。
所得税は13万8,500円×2=27万7,000円、
住民税は24万1,000円×2=48万2,000円となります。
参照元:国税庁「所得税の税率」
参照元:国税庁「給与所得控除」
参照元:国税庁「基礎控除」
参照元:国税庁「配偶者控除」
年収1000万円のサラリーマンができる節税対策
年収1,000万円でさらにどのような節税ができるのかを紹介していきます。
年収1,000万円の人は、
・各種所得控除の利用で所得税を節税
・任意の自治体に寄付することで寄附金控除が受けられるふるさと納税
・iDeCo
・不動産投資
・NISAの運用
各種所得控除の利用で節税する。
サラリーマンの場合、配偶者控除のほかにも、各種所得控除を利用することにより節税ができます。
それぞれの要件を満たす場合に所得から一定の金額を控除できるもので、利用できる主な所得控除は以下のとおりです。
・扶養控除
・医療費控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・住宅ローン控除
所得控除は課税所得から差し引けるものですが、算出した所得税額から差し引ける税額控除もあります。
税額控除の代表的なものが住宅ローン控除を利用する
住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」といい、一戸建てやマンションなどを購入する際にローンを組んだ場合、利用が可能です。
新築と中古、住宅の増改築等で要件が異なります。2022年には改正が行われるなど、購入したタイミングの要件に該当するかよく確認しましょう。
なお、サラリーマンは、基本的に年末調整で書類を提出することで控除の手続きが受けられます。しかし、医療費控除や住宅ローン控除など一部の控除は年末調整で手続きできず、確定申告が必要になるため注意してください。
年収1000万円サラリーマン向けのふるさと納税
応援したい地方自治体に寄付し、控除が受けられる制度です。
寄付金のうち2,000円を超える部分について所得税と住民税から控除できます。実質的な自己負担は2,000円で、さらに地域の名産品などお礼の品を受け取れるのが魅力です。
収入や家族構成などによって控除の上限額が定められているため、利用前に確認しておくとよいでしょう。
年収1000万円サラリーマン向けのiDeCo
iDeCoとは個人型確定拠出年金のことで、払い込んだ掛金を自分で運用し、資産形成できる私的年金制度です。65歳まで払い込みができ、60歳以降に老齢給付金を受け取れます。
iDeCoには3つの税制優遇措置があるのが特徴です。まず、掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となって課税所得額から差し引かれます。また、運用益は非課税となり、掛金の運用で得た利益は源泉分離課税20.315%を差し引かれることなく再投資されます。
受給時も所得控除を受けることができ、確定拠出年金を一時金で受給する場合は「退職所得控除」の対象で、年金で受給する場合は「公的年金等控除」の対象です。
年収1000万円サラリーマン向けの不動産投資
投資用として不動産を購入したときも、節税が可能です。
不動産投資による主な収益は家賃収入であり、収入から必要経費を差し引いた金額が不動産所得になります。所得がプラスになれば給与所得と合算して課税所得になり、税金が課せられます。
しかし、経費を差し引いた不動産所得が赤字になった場合、給与所得と損益通算することで課税所得を減らすことができるのです。
マンション投資で節税できる!仕組みや節税額を増やすコツについて解説しています。
年収1000万円サラリーマン向けのNISAの運用
NISAは少額投資非課税制度のことで、投資により得た利益に対しては課税されないため節税ができます。iDeCoのように給与所得から控除することはできませんが、投資で資産運用を考えている場合に節税が期待できます。
NISAのほかにつみたてNISAがあり、それぞれ運用期間は5年・20年です。また、2024年からは、NISAの仕組みも変わり、より仕組みが充実してきます。
老後に向けて長期的に資産形成しようと考える場合、つみたてNISAであれば節税しながら効率的な資産運用ができます。
年収1000万円サラリーマン向けの不動産投資の節税
年収1,000万円のサラリーマンでは不動産投資による節税効果も期待できます。
賃貸経営では、管理費や修繕費などの経費を計上できることが節税の理由です。
また、確定申告では青色申告にすることで特別控除を受けることもできます。
ここでは、不動産投資で節税できる仕組みや不動産投資のメリット・デメリットを紹介します。
不動産投資で節税できる仕組み
不動産投資で節税できるのは、以下の3つがポイントです。
・青色申告にする
・経費を計上する
・減価償却費を計上する
青色申告では最大65万円の「青色申告特別控除」を利用でき、大幅な節税ができます。
サラリーマンは不動産投資で不動産所得を得ている場合、事業届と「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで確定申告を青色申告にすることが可能です。
ただし、青色申告では複式簿記による記帳が必要です。さらに、貸借対照表および損益計算書を作成して確定申告書と一緒に電子申告で提出する、もしくは電子帳簿による保存をしなければなりません。
不動産投資では経費の計上で節税ができます。
賃貸経営の際は管理費や修繕費、管理会社への委託料、ローンの利息などさまざまな費用がかかりますが、それらは不動産収入からマイナスできる経費です。マイナスして赤字になれば、給与所得と損益通算して節税できます。
不動産を減価償却として毎年費用に計上できます。
不動産を購入した費用は、一度に全額を経費に計上することはできません。しかし、建物にかけた支出は法定耐用年数の期間、減価償却として毎年費用に計上できます。
例えば、鉄骨造の建物は34年という減価償却の期間が設定されており、償却期間内であれば実際の支出を伴わずに経費に計上して不動産所得を減らせるため、高い節税効果が期待できるでしょう。
不動産投資のメリット・デメリット
不動産投資は節税効果が得られるほか、以下のようなメリットがあります。
・不労所得が入る
・相続税対策ができる
不動産投資のメリットは安定的な収入が見込めることにあります。まず、賃貸経営は管理会社に委託することができ、空室が埋まりさえすれば家賃収入は不労所得になります。そのため、サラリーマンでも投資しやすいのがメリットです。
また、不動産は現金よりも相続税評価額が低くなるため、相続税対策にもなります。
一方で、不動産投資には空室のリスクがあり、空室が埋まらなければローンの返済だけが残るのがデメリットです。節税はできるものの、リスクがあることも把握して検討する必要があるでしょう。
年収1000万円サラリーマン向けの特殊な場合の節税方法
特殊なケースで節税できることもあります。株式投資をしていて損失を出した場合や災害・盗難にあった場合、配偶者と離婚または死別した場合などです。それぞれのケースで特例や控除の制度があります。また、不動産投資以外に副業をして利益を上げている場合も節税が可能です。
株取引で損失を出した場合
株取引をしていて売却損が発生した場合、損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことで節税ができます。繰り越した年に利益を出していれば、それと相殺できる「繰越控除」という特例です。
例えば50万円の損失が出た場合、翌年以降に50万円までの利益を出していても相殺されるため課税されません。ただし特例を受けるには、毎年確定申告が必要になります。
災害・盗難にあった場合
災害や盗難などで被害を受けた場合、雑損控除や災害免除法により税金の減免を受けられます。雑損控除は所得控除であるのに対し、災害免除法は所得税から控除される税額控除です。
災害減免法は自然災害や人為的災害による被害が対象で、雑損控除はさらに盗難・横領による被害が加わります。
年間所得1,000万円以下の場合は、雑損控除と災害減免法のどちらか1つを選択することができます。しかし、年間所得が1,000万円を超えると災害減免法は対象とならず、使えるのは雑損控除のみです。
両方適用になる場合は、どちらが有利になるか試算して検討する必要があります。
配偶者と離婚または死別した場合
配偶者の所得が一定額以下の場合は配偶者控除や配偶者特別控除を受けられますが、離婚や死別により配偶者がいなくなればそれらの適用はなくなり、控除は受けられません。
その代わり、寡婦控除やひとり親控除(寡夫控除)の対象になる可能性があります。これら控除を受けるには適用要件があり、該当する場合は年末調整で控除の申請ができます。
副業をしている場合
サラリーマンが副業で20万円以上の収入を得ている場合、確定申告が必要です。その際、事業に必要な経費を計上し、課税対象となる所得額を抑えることができます。また、青色申告にすれば最大65万円の青色申告特別控除により節税が可能です。
ただし、国税庁は2022年8月、売上が300万以下の場合は雑所得として扱うという所得税通達改正案を発表しました。雑所得は青色申告の対象ではなく、実際に改正が行われると副業の収入が300万円以下の場合は青色申告ができません。そのため、特別控除による節税はできなくなります。
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