課長に求められるスキル
係長時代の経験を通じて培われたマネジメントスキルは、課長になっても引き続き求められるものです。基本的なマネジメントスキルに加えて、新たに「変革リーダー」や「イノベーター」としてのスキルも身につけていく必要があります。
基本的なマネジメントスキル ①部下指導・育成スキル コーチング、リーダーシップ、OJT、部下モチベーション向上、コミュニケーション、ダイバシティーなど ②業務管理スキル 業務改善、目標管理、ヒューマンエラー防止、整理力向上、タイムマネジメント、など ③リスク管理スキル コンプライアンス、ハラスメント防止、クレーム対応、法務、メンタルヘルスなど
新たに求められるスキル PDCA、創造力、組織変革力、判断力の強化など
特に「現場のトップ」である課長にまず求められるのは、何と言っても「PDCAを回す力」です。新しい施策がきちんと現場に浸透するまで、課長としてのPDCAサイクルを回し続けることが重要です。
そのうえで、自部門(課)における改善・新しいビジネスチャンスなど「変革の芽」を見つけ、提言し、実際に行動を起こすことも必要です。変革リーダーとしての資質を磨き、年に一つは自部門にとって価値ある新しい事を生み出していけるよう、創造力や判断力を強化するとよいでしょう。
タスクマネジメント力
基本となるのがマネジメント力です。 課長が担うマネジメントには、人と仕事の2つに対するもので分類できます。
マネジメント力におけるポイントは、以下の3つです。 〇 目標設定 〇 役割分担 〇 人材育成 この3つのポイントに重きを置きながら、マネジメントとして必要なアクションを行わなければいけません。
タスクマネジメントは、目標達成等に向けた施策や行動を管理する能力です。組織の成果をあげていくうえで、決定した施策をタスクに分解すること、そして、自分やメンバーでタスク進行を分担しながら、その進捗をマネジメントしていくことが必要です。
単に進捗を把握・管理していくだけではなく、遅れているものがあればサポートしたり、タスクの優先順位や納期を踏まえながら、割り振りを調整していったりすることが必要です。
また、個々のタスクを進捗していくだけではなく、計画全体のPDCAサイクルを回すこともリーダーである課長の役割です。PDCAサイクルは、P(計画)⇒D(実行)⇒C(評価)⇒A(改善)を繰り返して目標達成に近づいていくプロセスです。PDCAはビジネスパーソンであれば大半が知っている用語ですが、きちんと実践できている人は意外と少ないのが現状です。
課長に求められるのPDCAサイクルを実践するには、ロジカルシンキングが必要となります。現状や実績、課題の整理や分析を行ない、対策・実行計画を策定して、PDCAを一種のプロジェクトとして進めていくことが必要です。
リーダーシップ力
課長はチームを引っ張っていくリーダーシップ力も求められます。リーダーシップはビジョンやゴールを定めて、メンバーを鼓舞する力です。
目標設定や役割分担、人材育成など、リーダーシップに通ずる部分もあるかもしれませんが、実際には課長に必要なリーダーシップ力とは異なる点が多いです。
マネジメント力とは、いわば管理するためのスキルです。一方、リーダーシップ力は、新しいことを取り入れて変革をさせます。
たとえば、マネジメント面で考えれば、あらゆる面でリスクを回避してトラブルや損失の発生を避けなければいけません。リーダーシップ力に必要なのは、ある程度のリスクを踏まえたうえで、新しい挑戦を考えることです。
PDCAサイクルは、最近では、G-PDCAサイクルなどとも言われます。G-PDCAの「G」はゴール、目標です。PDCAサイクルはゴールがなければ、そもそもスタートできません。また、明確な共通ゴールがあるからこそ組織のメンバーは協力・連携することができます。
リーダーシップの上述の通り、ビジョンやゴールの定めてメンバーを鼓舞することですが、その発揮方法には様々なものがあります。最近のリーダーシップ研究では、絶対的に優れた正しいリーダーシップがあるわけではなく、状況や特性に応じたリーダーシップを発揮することが大切だというシチュエーショナルリーダーシップの考え方が主流になっています。
ダニエル・ゴールマンによれば、主なリーダーシップのあり方は6種類あります。 ・ビジョン型リーダーシップ ・コーチ型リーダーシップ ・関係重視型リーダーシップ ・民主型リーダーシップ ・実力型リーダーシップ ・強制型リーダーシップ さまざまなスタイルがありますが、自身の性格や組織の性質、状況に合うリーダーシップを取り入れて発揮することが大切です。
人材育成力
社員たちがスキルアップすれば、今と未来の目標達成に近づきます。課長には新人を一人前のプレイヤーへ、そして、プレイヤーとしての成果創出を経て、次の係長や課長を生み出す人材育成が求められます。
課長が担う人材育成は、現場への関わりを通じた1on1やOJTに近いものであり、ティーチングやコーチングを組み合わせることが大事です。
ティーチングはアドバイスを通して個人やチームのパフォーマンスを向上させる方法、コーチングは問いを活用して相手の意見や考えを引き出す方法です。
2つのアプローチを使い分けながら人材育成に取り組みましょう。
フォロワーシップ
フォロワーシップは、アメリカのカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が提唱したもので、リーダーシップ育成のステップとして近年注目されている概念です。
課長は、課にいる多くの部下の他に、上司もたくさんいる役職です。 役職のなかでも中間に位置する課長は、自分のポジションのせいで悩まされることもあるでしょう。
課長であるがゆえの悩みとして、自身の上司との関係性が挙げられます。 もし、上司の能力をも大切なリソースと捉えて活用できれば、悩むどころか関係性を利用できることも可能でしょう。
これが、フォロワーシップ力です。 上司の能力や人脈、持っている権限などを活用するために、関係性を構築したり自分の意見に説得力を持たせたりします。
フォロワーシップはチームの成果を最大化させるために、“自律的かつ主体的にリーダーや他メンバーに働きかけ支援すること”を意味します。
課長は自分が担当する”課の長”ですが、同時に”部のマネジメントチームの一員”でもあります。従って、課長として活動するに際しては、部長や上層部に対するフォロワーシップが求められます。
フォロワーシップとは、上述の通り、“従順に上の指示に従う”ということではありません。例えば、上司の意思決定や行動に誤りがあると感じた場合には臆することなく提言したり働きかけたりと、組織ゴールの達成に向けて主体的に行動する姿勢がフォロワーシップです。
管理職になると、自分のチームに対する“リーダーシップ”ばかりが意識されがちですが、成果を上げるためには上司に対するフォロワーシップと信頼関係も非常に重要です。部長や経営陣に対するフォロワーシップの現状を認識して、良きフォロワーを目指すことが大切です。
セルフマネジメント
セルフマネジメントとは、“目標達成や自己実現のために、自分自身を律すること”です。自分自身をマネジメントできなければ、メンバーをマネジメントすることはできないでしょう。
数ある役職のなかで中間に位置する課長は、今後のキャリア形成やより上位の役職を目指して実績を作れる絶好のポジションでもあります。 このように、多くの部下の業務やモチベーションなどを管理する一方で、自分自身のことも課長はしっかりと考えなければいけません。
自分自身が目指したい目標に向けてモチベーションの向上を図るような能力が、セルフマネジメント力です。 自分の将来に対してやストレスの軽減について、自分自身が面倒を見る必要があるのです。
課長という役職には、重大な責任が伴います。 ときには、自分だけでは抱えきれないストレスに悩まされることもあるでしょう。
企業内の上司だけでなく、社外のメンターやコーチに相談することも大切です。
セルフマネジメントの対象は自分自身の言動です。課長には継続的な目標達成に向けて、進捗管理と人材育成を始めとするたくさんの業務と責任が生じます。その中で、メンバーと良好な人間関係を作るうえでも、意思決定や計画・実行の品質を高めるうえでも、自分自身の心身を良い状態に整えることが大切です。
ダイバーシティ
ダイバーシティとは、直訳で「多様性」を意味し、年齢・性別・国籍・学籍・宗教・性的思考など、人材の多様性を認める考えのことで、近年の日本でも取り組みが広がっています。ダイバーシティを実現するにはまず、現場に最も近い管理職である課長がダイバーシティの重要性・必要性を理解し、部下を直接マネジメントする必要があるため、多様性を受け入れるだけでなく、個々の違いを活かして能力を最大限に発揮できる機会を提供することが大切です。
係長時代の経験を通じて培われたマネジメントスキルは、課長になっても引き続き求められるものです。基本的なマネジメントスキルに加えて、新たに「変革リーダー」や「イノベーター」としてのスキルも身につけていく必要があります。
基本的なマネジメントスキル
①部下指導・育成スキル
コーチング、リーダーシップ、OJT、部下モチベーション向上、コミュニケーションなど
②業務管理スキル
業務改善、目標管理、ヒューマンエラー防止、整理力向上、タイムマネジメント、など
③リスク管理スキル
コンプライアンス、ハラスメント防止、クレーム対応、法務、メンタルヘルスなど
新たに求められるスキル
PDCA、創造力、組織変革力、判断力の強化など
「現場のトップ」である課長にまず求められるのは、何と言っても「PDCAを回す力」です。新しい施策がきちんと現場に浸透するまで、課長としてのPDCAサイクルを回し続けることが重要です。
そのうえで、自部門(課)における改善・新しいビジネスチャンスなど「変革の芽」を見つけ、提言し、実際に行動を起こすことも必要です。変革リーダーとしての資質を磨き、年に一つは自部門にとって価値ある新しい事を生み出していけるよう、創造力や判断力を強化するとよいでしょう。