課長昇進の内示はいつ?
課長への昇進内示は、企業における重要なステップです。特に係長として役職に就いている場合、課長への昇進は一つのキャリアの大きなステップアップを意味します。
しかし、昇進のタイミングや内示のタイミングはさまざまであり、時には予測が難しいこともあります。
課長への内示が行われるタイミング、昇進を成功させるためのポイント、そして他の係長の経験を踏まえたアドバイスを紹介します。
課長昇進の一般的なタイミング
課長への昇進は通常、企業の評価サイクルに基づいて決定されます。
多くの企業では、年度末や半期の終わりにかけて昇進が行われることが一般的です。これは、業績評価が年度ごとに行われる場合が多いためです。
しかし、企業文化によっては異なるタイミングでの昇進が一般的な場合もあります。たとえば、業績が好調な場合は早期に内示が出ることもあれば、逆に業績が振るわない場合は内示が遅れることもあります。
内示の過程とプロセス
課長昇進の内示は、上司や人事部門からの推薦を受けて行われることが多いです。
推薦のプロセスには、業績評価だけでなく、リーダーシップ能力やチームとの連携力が考慮されます。
多くの企業では、昇進候補者リストが作成され、その後、上層部の承認を経て内示が行われます。
また、部門ごとに異なる基準が設けられていることもあり、同じ会社でも部署ごとに昇進の難易度が異なる場合があります。
内示が遅れる理由とその背景
内示が遅れる要因にはさまざまなものがあります。
組織の再編や経営方針の変更は、その主要な要因の一つです。
特に、大規模な企業では、複数の部門間での調整が必要になるため、内示のタイミングがずれ込むことがあります。
また、外部の経済状況が企業の業績に影響を与える場合、昇進の判断が慎重になることもあります。
このような背景を理解しておくことは、昇進を目指す際に重要です。
内示を早めるための戦略
昇進を早めるためには、上司との良好なコミュニケーションが不可欠です。
定期的に自分の業績を報告し、目標達成に向けた具体的な取り組みをアピールすることが重要です。
また、日常の業務での成果を定量的に示すことで、評価の際に有利に働くことがあります。
さらに、自分の強みを把握し、それを上司に効果的に伝えるスキルも求められます。
昇進を成功させるためのキャリア戦略
課長昇進を目指す上で、部下との関係構築は非常に重要です。
リーダーシップを発揮し、チーム全体の成果を高めることが求められます。また、組織全体への貢献度を高めるためには、プロジェクトの管理能力や問題解決能力も必要です。
昇進後の役割に備えるためのスキルアップも忘れてはなりません。
他の係長の事例:成功と失敗から学ぶ
実際に課長昇進を果たした係長の事例からは、多くの学びが得られます。
たとえば、特定のプロジェクトでリーダーシップを発揮し、組織全体に大きな影響を与えた成功例。
また、逆に人間関係のトラブルが原因で昇進を逃したケースもあります。
他人の経験を参考に、自分のキャリア戦略を見直すことは重要です。
課長昇進を目指す人へのアドバイス
キャリアアップを目指す際には、まず自己分析が重要です。
自分の強みと弱みを把握し、昇進に向けて何を改善すべきかを明確にすることが必要です。
また、メンターを見つけてアドバイスを受けることで、キャリアの方向性がより明確になります。
モチベーションを維持するためには、短期的な目標を設定し、それを一つずつ達成していくことが効果的です。
課長とは将来の幹部候補としてのスタートライン。年収1200万円の課長になった時の心構え
それまで現場リーダー的な立場であった係長としての働きとどこが違うのか分からないまま、課長職に就く人もいるかもしれません。しかし、係長と課長の立ち位置は明確に異なります。
組織における課長職は経営計画や事業方針を実行する要であり、現場における価値創造や人材育成をマネジメントする重要な立場です。
課長には、目標設定や進捗管理、人材育成、リスクマネジメントや業務改善まで幅広い役割が求められます。正しい仕事を身につけ、部下のお手本にならないといけません。
課長職は本格的なマネジメント業務のスタート地点でもあり、プレイヤー時代とは異なる能力やスキルを求められるようになります。
新任管理職研修などの支援を通じて、課長や必要な役割認識や能力・スキルをしっかりと身に付け、組織の成果をあげていけるように支援しましょう。
名実ともに「管理職」の仲間入り
課長は、多くの組織において「中級管理職」と位置付けられています。
係長時代にはなかった管理職としての職務権限が与えられる、管理職手当がつく、など”名実ともに管理職”と認められる立場となります。
組織によっては「専任課長」として管理職権限が与えられていない課長職もありますが、多くの組織では「課長以上=管理職」であり、経営陣の一翼を担う「マネージャー」としての働きが求められるようになります。
真の管理職になったことを実感するミッションとして、経営陣が顔を並べる全社会議への参加をあげる方がいます。経営トップの考えに直接触れる機会が増えることで、係長時代よりもさらに深く組織の経営理念にコミットできるようになる一方、課の数値目標達成が果たせない場合にはトップとしての「責任」が生じるなど、プレッシャーも大きくなります。
課長は企業の現場をまとめて業績を担い、戦術を遂行する中枢ポジションに立つ役職です。組織によって異なりますが、一般的には部長・室長に次ぐ職位であり、本格的な管理職のスタート地点です(組織によっては部長代理や次長などのポジションが部長と課長の間に入ることもあります)。
冒頭で紹介した通り、組織にとって重要な役割であると同時に、本格的にマネジメント業務に入るポジションとなり、個人にとっても大きな変化を迫られるタイミングとなります。
プレイングマネージャーからプロデューサー的な立場への転換
プレイングマネージャーでもあった係長時代なら、「今月はチームの数字が上がっていないな」と思ったら、自分の働きで挽回することもあったかもしれません。しかし、課長は自部門(課)のトップとして、課の中に属している複数のチームの成果を出すことが求められる立場です。
仮に自部門(課)のチームすべての数字が悪かった場合、これまでのように自分一人が動いて挽回するのは、時間的にも業務量的にも厳しいものがあります。
つまり課長になったら、自らが前面に出て道を切り開く立場から、俯瞰的にチームを見ながら現場をフォローすることで成果を出す「プロデューサー」的な立場にシフトしていかなくてはなりません。
課長時代にマネジメント力を高めて自部門(課)の実績をあげることができれば、将来の幹部候補としての道が開けます。課長の役割をしっかりと果たし、組織の期待に応えることで、次のステージ(部長へのステップアップ)が見えてきます。
課長と係長の違いとは
係長はチームに与えられた目標達成に向けて、メンバーを動かしながら自らもプレイングマネージャーとして成果を出すことが求められる立場です。
管理職として目標達成に向かってチームを牽引しつつ、自身も突出した成果を上げて組織に貢献する姿を見せることで、部下に良い影響を与えていく、つまりリーダーシップを発揮することが係長の働きであると言えます。
一方課長には、リーダーシップを前面に発揮するよりも、中級管理職としてよりマネジメントに軸を置いた働きが求められます。組織のビジョン・経営方針を自部署の目標に落とし込んだうえで、その目標達成に向けて最適な役割分担を行い、部下の能力を最大限に引き出す「プロデューサー的」な働きをすることが、係長と課長の違いです。
課長に求められる「長」としての3つの役割
課長の立場はあくまで「現場のトップ」であることです。組織の方針に従い、自分の持ち場をどう動かすかを考えるのが課長の仕事であり、自部門(課)の目標達成を実現するところまでが課長に求められる役割です。
時に部下と上司との板挟みとなり、まさに「中間管理職」のイメージが強い立場ですが、「現場と経営陣との橋渡し」として機能することが期待されます。
部長は現場の中心から、より”経営陣寄り”の立場となり、トップの経営判断をサポートする仕事にシフトするのが、課長との大きな違いです。いかなる経営環境においても組織が成長を続けるために、各部門の成長戦略とリスク管理を両立させながら組織をデザインし、業績拡大を実現することが部長の主な役割と言えます。
また、時代のニーズを踏まえ新しい仕事を生み出し、組織の成長に直接貢献することが期待されます。
豊富な経験があり、部下があり、裁量もある。加えて、気力・体力も充実している。そうした充実感を最も得られるのは、多くのビジネスパーソンにとって「課長時代」ではないでしょうか。実際に現在は経営層クラスで、過去に課長職を経験された多くの方が、「課長の仕事が一番面白かった!」とおっしゃっています。
課長になられて日の浅い方や、今現役で課長をなさっている方の中には、「課長の仕事」の広さと深さ、多忙さにとまどい、その「面白さ」をまだ実感できていないという方もいるかもしれません。自ら動いて成果を出すプレイングマネージャーとして活躍していた方は尚更でしょう。
しかし、ヒト・カネ・モノといった組織の経営資源を現場に上手く配分し、チーム全体で上げることができた成果には、一人の力で出した成果とはまた違った”達成感”があります。
そうした管理職としての経験を積み重ねることで、一プレイヤーとしての意識から脱却し、次世代幹部候補として組織マネジメントにあたる”手ごたえ”と”覚悟”が生まれます。
つまり、充実した課長時代を過ごすことが、その後の大きな飛躍につながると言えるのかもしれませんね。
課長(管理職)向きの人材とは
ここでは、具体的にどのような人材が課長(管理職)に向いているのかを2つの視点から解説します。
優れた判断力・決断力がある
現場に最も近い管理職である課長は、チーム全体・組織全体へ及ぼす影響を考慮してさまざまな決断・判断が求められます。時にはプレッシャーを伴うような場面にも遭遇しますが、そうした際にも適切かつ時間をかけ過ぎずに決断・判断を下すことは管理職に求められる重要な役割です。そのため、優れた判断力・決断力がある人材は課長に向いているといえるでしょう。
社内で厚い信頼を得ている
課長は、部下をマネジメントし、目標達成のために導く役割を担っていますので、社内で厚い信頼を得ている人材は課長(管理職)に向いているといえます。能力は高くても人望がなければ部下をスムーズにマネジメントすることは難しいですから、普段から言動やコミュニケーションの質に配慮し、社内での信頼が高い人材が課長に向いていると言えるでしょう。
課長に求められる役割
すべての管理職に共通する役割として、以下の3つが挙げられます。
・業務遂行・管理における役割
・教育・指導者としての役割
・プレイヤーとしての役割
係長時代に続き、これら3つの役割を果たすことが大前提としてありますが、課長には係長よりもさらにレベルの高い役割を果たすことが求められます。
中間管理職である課長には、上位の管理職(部長)が打ち出す方針に従い、現場のトップとして日々PDCAサイクルを徹底的に回しながら、現場を円滑に動かすことが求められます。
組織の経営理念を十分に理解したうえで、現場に新しい施策を浸透させるためのプランを立案・実行し、その効果を確認しながら改善を図り、成果を生み出す「現場責任者」の役割を果たさなければなりません。
自部門(課)の成果を効率よく出すためには、「適材適所の最適な役割分担」を行うことが重要です
部長クラスと違い、現場をよく知る課長クラスだからこそ、部下の能力を最大限に活かす人員配置が可能です。経営戦略の実現に向けて経営陣が描く組織図をより”実践的な”ものにするために、現場のトップとしての意見を伝えることも課長の重要な役割のひとつと言えます。
目標を設定しメンバーに共有する
課長は事業方針や経営計画を十分に理解したうえで、具体的な数値目標を設定し達成するための戦術を決める役割を担います。
目標を策定する際のアプローチは、以下の2つがあります。 ・経営計画を踏まえて、リーダーである課長が策定するトップダウン型 ・メンバーに目標を考えさせて積み上げるボトムアップ型
現実には上位目標との整合性が取れるトップダウン型、部下の納得感や主体性を生み出しやすいボトムアップ型、この2つを融合させることが大切です。
目標設定を効果的にするためのポイントは、部下個人にとっての意味付けをきちんとすることで、そして、SMARTの原則を押さえることです。チーム・個人の目標が決まったら、チーム内に浸透させて、各メンバーの努力や行動のベクトルが同じ方向に向くように尽力しましょう。
目標設定で必須のフレームワーク「SMART」とは?具体例と活用のコツを解説
計画を実行して成果をあげる
目標達成に向けて計画を実行して成果をあげることが課長の大きな役割です。
課長はプレイングマネージャーである場合もあると思いますが、大切なことはプレイヤーとしてパフォーマンスすることではなく、役割分担や進捗確認などを通じてメンバーの実行をマネジメントすることです。
計画を実行する上で、まず大切なのが適材適所な役割分担です。業務を遂行するのに必要なスキルや経験が備わっているかを確認して、また強みを生かすことも考えて、適材適所に割り当てましょう。
その上で、任せっぱなしにするのではなく、しっかりと進捗の確認、サポートして、計画が実行されるようにしていきます。
業務を見直し、ムリ・ムダ・ムラを徹底的になくす
係長などのポジションが計画を実行して結果を出すことにフォーカスしていたとすると、課長はもう一段階高い視座で組織や個人の生産性などを考えることも必要になります。
業務プロセスの分析や再構成を行ない、IT化、オートメーション化、外注化などを組み合わせて、生産性向上を検討・実現することも課長の仕事です。
リスクを洗い出し、対策を考える
部長・室長と連携をとりながらチーム内のリスクを洗い出して対策を考えましょう。
特に労務管理や個人情報の管理、業界や職種に関する規制などの法令に則った対応が求められる項目は、しっかりとした知識を踏まえたうえで対策を講じる必要があります。
コンプライアンスや労務管理、ハラスメントなどは、10年ほど前とは求められる基準も変わっていますので、注意が必要です。
人材を育成する
“経営の神様”と呼ばれた松下電機(現在のパナソニック)の創業者 松下幸之助氏が「ものをつくる前に、人をつくる」と語るほど、人材育成は組織における重要事項です。
課長の場合、個人をケアできる組織規模でマネジメントしていることが多いですので、部長が仕組みや配置で人生育成するウェイトが増えるのに対して、課長は1対1の関わりを通じて人材育成することが多くなります。
人の弱みではなく、強みを活かすことが人材育成を進める基本の考え方です。前述したように、その人の強みにあった業務分担を行なうことも、人材育成の一つになるでしょう。
課長に求められるスキル
係長時代の経験を通じて培われたマネジメントスキルは、課長になっても引き続き求められるものです。基本的なマネジメントスキルに加えて、新たに「変革リーダー」や「イノベーター」としてのスキルも身につけていく必要があります。
基本的なマネジメントスキル ①部下指導・育成スキル コーチング、リーダーシップ、OJT、部下モチベーション向上、コミュニケーション、ダイバシティーなど ②業務管理スキル 業務改善、目標管理、ヒューマンエラー防止、整理力向上、タイムマネジメント、など ③リスク管理スキル コンプライアンス、ハラスメント防止、クレーム対応、法務、メンタルヘルスなど
新たに求められるスキル PDCA、創造力、組織変革力、判断力の強化など
特に「現場のトップ」である課長にまず求められるのは、何と言っても「PDCAを回す力」です。新しい施策がきちんと現場に浸透するまで、課長としてのPDCAサイクルを回し続けることが重要です。
そのうえで、自部門(課)における改善・新しいビジネスチャンスなど「変革の芽」を見つけ、提言し、実際に行動を起こすことも必要です。変革リーダーとしての資質を磨き、年に一つは自部門にとって価値ある新しい事を生み出していけるよう、創造力や判断力を強化するとよいでしょう。
タスクマネジメント力
基本となるのがマネジメント力です。 課長が担うマネジメントには、人と仕事の2つに対するもので分類できます。
マネジメント力におけるポイントは、以下の3つです。 〇 目標設定 〇 役割分担 〇 人材育成 この3つのポイントに重きを置きながら、マネジメントとして必要なアクションを行わなければいけません。
タスクマネジメントは、目標達成等に向けた施策や行動を管理する能力です。組織の成果をあげていくうえで、決定した施策をタスクに分解すること、そして、自分やメンバーでタスク進行を分担しながら、その進捗をマネジメントしていくことが必要です。
単に進捗を把握・管理していくだけではなく、遅れているものがあればサポートしたり、タスクの優先順位や納期を踏まえながら、割り振りを調整していったりすることが必要です。
また、個々のタスクを進捗していくだけではなく、計画全体のPDCAサイクルを回すこともリーダーである課長の役割です。PDCAサイクルは、P(計画)⇒D(実行)⇒C(評価)⇒A(改善)を繰り返して目標達成に近づいていくプロセスです。PDCAはビジネスパーソンであれば大半が知っている用語ですが、きちんと実践できている人は意外と少ないのが現状です。
課長に求められるのPDCAサイクルを実践するには、ロジカルシンキングが必要となります。現状や実績、課題の整理や分析を行ない、対策・実行計画を策定して、PDCAを一種のプロジェクトとして進めていくことが必要です。
リーダーシップ力
課長はチームを引っ張っていくリーダーシップ力も求められます。リーダーシップはビジョンやゴールを定めて、メンバーを鼓舞する力です。
目標設定や役割分担、人材育成など、リーダーシップに通ずる部分もあるかもしれませんが、実際には課長に必要なリーダーシップ力とは異なる点が多いです。
マネジメント力とは、いわば管理するためのスキルです。一方、リーダーシップ力は、新しいことを取り入れて変革をさせます。
たとえば、マネジメント面で考えれば、あらゆる面でリスクを回避してトラブルや損失の発生を避けなければいけません。リーダーシップ力に必要なのは、ある程度のリスクを踏まえたうえで、新しい挑戦を考えることです。
PDCAサイクルは、最近では、G-PDCAサイクルなどとも言われます。G-PDCAの「G」はゴール、目標です。PDCAサイクルはゴールがなければ、そもそもスタートできません。また、明確な共通ゴールがあるからこそ組織のメンバーは協力・連携することができます。
リーダーシップの上述の通り、ビジョンやゴールの定めてメンバーを鼓舞することですが、その発揮方法には様々なものがあります。最近のリーダーシップ研究では、絶対的に優れた正しいリーダーシップがあるわけではなく、状況や特性に応じたリーダーシップを発揮することが大切だというシチュエーショナルリーダーシップの考え方が主流になっています。
ダニエル・ゴールマンによれば、主なリーダーシップのあり方は6種類あります。 ・ビジョン型リーダーシップ ・コーチ型リーダーシップ ・関係重視型リーダーシップ ・民主型リーダーシップ ・実力型リーダーシップ ・強制型リーダーシップ さまざまなスタイルがありますが、自身の性格や組織の性質、状況に合うリーダーシップを取り入れて発揮することが大切です。
人材育成力
社員たちがスキルアップすれば、今と未来の目標達成に近づきます。課長には新人を一人前のプレイヤーへ、そして、プレイヤーとしての成果創出を経て、次の係長や課長を生み出す人材育成が求められます。
課長が担う人材育成は、現場への関わりを通じた1on1やOJTに近いものであり、ティーチングやコーチングを組み合わせることが大事です。
ティーチングはアドバイスを通して個人やチームのパフォーマンスを向上させる方法、コーチングは問いを活用して相手の意見や考えを引き出す方法です。
2つのアプローチを使い分けながら人材育成に取り組みましょう。
フォロワーシップ
フォロワーシップは、アメリカのカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が提唱したもので、リーダーシップ育成のステップとして近年注目されている概念です。
課長は、課にいる多くの部下の他に、上司もたくさんいる役職です。 役職のなかでも中間に位置する課長は、自分のポジションのせいで悩まされることもあるでしょう。
課長であるがゆえの悩みとして、自身の上司との関係性が挙げられます。 もし、上司の能力をも大切なリソースと捉えて活用できれば、悩むどころか関係性を利用できることも可能でしょう。
これが、フォロワーシップ力です。 上司の能力や人脈、持っている権限などを活用するために、関係性を構築したり自分の意見に説得力を持たせたりします。
フォロワーシップはチームの成果を最大化させるために、“自律的かつ主体的にリーダーや他メンバーに働きかけ支援すること”を意味します。
課長は自分が担当する”課の長”ですが、同時に”部のマネジメントチームの一員”でもあります。従って、課長として活動するに際しては、部長や上層部に対するフォロワーシップが求められます。
フォロワーシップとは、上述の通り、“従順に上の指示に従う”ということではありません。例えば、上司の意思決定や行動に誤りがあると感じた場合には臆することなく提言したり働きかけたりと、組織ゴールの達成に向けて主体的に行動する姿勢がフォロワーシップです。
管理職になると、自分のチームに対する“リーダーシップ”ばかりが意識されがちですが、成果を上げるためには上司に対するフォロワーシップと信頼関係も非常に重要です。部長や経営陣に対するフォロワーシップの現状を認識して、良きフォロワーを目指すことが大切です。
セルフマネジメント
セルフマネジメントとは、“目標達成や自己実現のために、自分自身を律すること”です。自分自身をマネジメントできなければ、メンバーをマネジメントすることはできないでしょう。
数ある役職のなかで中間に位置する課長は、今後のキャリア形成やより上位の役職を目指して実績を作れる絶好のポジションでもあります。 このように、多くの部下の業務やモチベーションなどを管理する一方で、自分自身のことも課長はしっかりと考えなければいけません。
自分自身が目指したい目標に向けてモチベーションの向上を図るような能力が、セルフマネジメント力です。 自分の将来に対してやストレスの軽減について、自分自身が面倒を見る必要があるのです。
課長という役職には、重大な責任が伴います。 ときには、自分だけでは抱えきれないストレスに悩まされることもあるでしょう。
企業内の上司だけでなく、社外のメンターやコーチに相談することも大切です。
セルフマネジメントの対象は自分自身の言動です。課長には継続的な目標達成に向けて、進捗管理と人材育成を始めとするたくさんの業務と責任が生じます。その中で、メンバーと良好な人間関係を作るうえでも、意思決定や計画・実行の品質を高めるうえでも、自分自身の心身を良い状態に整えることが大切です。
ダイバーシティ
ダイバーシティとは、直訳で「多様性」を意味し、年齢・性別・国籍・学籍・宗教・性的思考など、人材の多様性を認める考えのことで、近年の日本でも取り組みが広がっています。ダイバーシティを実現するにはまず、現場に最も近い管理職である課長がダイバーシティの重要性・必要性を理解し、部下を直接マネジメントする必要があるため、多様性を受け入れるだけでなく、個々の違いを活かして能力を最大限に発揮できる機会を提供することが大切です。
係長時代の経験を通じて培われたマネジメントスキルは、課長になっても引き続き求められるものです。基本的なマネジメントスキルに加えて、新たに「変革リーダー」や「イノベーター」としてのスキルも身につけていく必要があります。
基本的なマネジメントスキル
①部下指導・育成スキル
コーチング、リーダーシップ、OJT、部下モチベーション向上、コミュニケーションなど
②業務管理スキル
業務改善、目標管理、ヒューマンエラー防止、整理力向上、タイムマネジメント、など
③リスク管理スキル
コンプライアンス、ハラスメント防止、クレーム対応、法務、メンタルヘルスなど
新たに求められるスキル
PDCA、創造力、組織変革力、判断力の強化など
「現場のトップ」である課長にまず求められるのは、何と言っても「PDCAを回す力」です。新しい施策がきちんと現場に浸透するまで、課長としてのPDCAサイクルを回し続けることが重要です。
そのうえで、自部門(課)における改善・新しいビジネスチャンスなど「変革の芽」を見つけ、提言し、実際に行動を起こすことも必要です。変革リーダーとしての資質を磨き、年に一つは自部門にとって価値ある新しい事を生み出していけるよう、創造力や判断力を強化するとよいでしょう。
課長の仕事とは
課長には、「自部門(課)で前年比3割以上の成果を出す」ことが求められます。
当然、課長一人の努力で達成できるものではなく、部下の力をひとつにまとめ上げる手腕を発揮してこそ、管理職としての責任を果たしている、と言うことができます。
そこで、部下の力を最大限に引き出し、自部門(課)が目標を達成できるよう現場の環境を整えていくことが課長の主な仕事となります。具体的には、以下3つの観点からマネジメント(管理)を行います
課長が行うマネジメントの観点
組織のマネジメント
組織は管理職自身を含め、複数のメンバーから構成されます。組織として最大の成果を上げるためには、メンバーのエネルギーのベクトル合わせをすることが必要です。そのために欠かせないものが、組織目標です。まずは「組織目標の設定と共有」を図ることが、組織のマネジメントのポイントです。
業務のマネジメント
業務のマネジメントとは、メンバーの業務の「分業」と「調整」をすることです。分業とは、業務を細分化し、それを誰に担当させるかを決めることです。そして、これらの複数の業務が円滑に行われ、組織として最大の成果が出せるように調整を行うことが、課長の日常業務の中心です。
人のマネジメント
組織を構成するのは「人」です。したがって、「人」を強化することが組織を強くすることにつながります。 人のマネジメントとは具体的には「育成」、「配置」、「評価」、「労務管理」のことです。
課長が日々行う業務
課長が行う3つのマネジメント観点に基づき、課長が日々行う業務は次の5つとなります。
組織目標を設定し、メンバーに共有する ~組織のマネジメント
事業内容・意義を十全に理解したうえで、具体的な数値目標を設定し、達成させるための戦略を立てることが課長の仕事です。
目標の策定方法には、課長が自らの意志に基づき策定するトップダウン方式と、部下に目標を考えさせるボトムアップ型があります。
ボトムアップ型で部下の意見を聞いたとしても、最終的に目標を決定するのはチームのトップである課長の役目です。
しかし、目標を設定するだけでは課長の仕事としては不十分です。目標達成に向けて部下全員がその目標を正しく理解し、共有したうえで、エネルギーのベクトルを同じ方向に向けるよう尽力します。
部下のベクトルを同じ方向に向けるためのポイント
①納得させる 課長は目標設定の最終決定者として、なぜこの目標に決定したのかを部下にきちんと説明し、納得させなければなりません。
②繰り返し語る 目標共有のためには、形式的に壁に張り出しておくだけでなく、日常的に「繰り返し」「語る」ことが必要です。
③熱く語る 繰り返し語っても、それが事務的だと部下の心に響きません。この目標を達成することがいかに自分の部署、会社の発展、社会への貢献につながるのかという思い(信念)を伝えることが重要です。
④PDCAサイクルに組み込む 日常業務と密接な接点がないと目標共有は進みません。PDCAサイクルに目標の進捗確認作業を組み込み、日頃の業績管理を通じて、日々目標に立ち返るよう課長から部下に働きかけると効果的です。
最適な業務分担を決定し、業務指示と進捗確認を適切に行う ~業務のマネジメント
設定した組織目標の達成に向けて、課長には最適な業務分担を行うことが求められます。業務分担の決定にあたっては、現時点でその業務を遂行するうえで必要なスキルや経験が備わっている部下を割り当てるのが最も妥当です。
しかし、部下育成という観点においてはその限りではありません。
例えば、若手社員には課内の業務全般を理解させるために一定期間のローテーションで新しい業務を担当させる。中堅社員には管理職へのステップアップの意識づけとして個別業務ではなくいくつかの業務を束ねるようなものを担当させる。などの工夫も必要です。
課長には短期的かつ長期的な視点で考えることが求められます。
また、個々の業務の範囲においては、部下に方向性を示しつつ裁量を与えることも大切です。
もちろん任せっぱなしにするのではなく、課長が進捗を確認したうえで、完全遂行できるようフォローしていくことが重要です。
分担が決まったら、目標達成に向けて適切な業務指示を行い、「期限間際になって作業が思うように進んでいないことが判明」といった事態にならないよう、日々進捗確認をします。
適切な業務指示とするための要素は「3W1H」 ①「誰が(WHO)」 担当者を明確にします。「誰かやっておいて」と言うだけでは、部下は自分以外の誰かがやるだろうと考えて、結局誰もやっていなかったという事態になりかねません。
②「何を(WHAT)」 やるべきことを明確に伝えます。何をやったらいいかわからないような指示は指示とは言えません。部下の立場で「何を」すべきか、それがわかるかどうかを自問自答してみるべきです。
③「いつまでに(WHEN)」 解釈の余地がない、具体的な期限を伝えます。あいまいな期限は期限を設定していないことと同じです。管理職は、「締め切りのない仕事はいつまでも終わらない」と心しておきましょう。 ■期限に関するNGワード例 「なる早(なるべく早く)」 「午後一」 「来週の前半」
④「どうする(HOW)」 期待されるアウトプットレベルを明確に伝えます。部下からの報告内容がイメージと違うということがあれば、部下側の問題よりまずは管理職からの指示が適切でなかったと考えるべきです。
部門全体に影響する業務改善を行う ~業務のマネジメント
係長時代は自ら率いるチームの業務を見直し、業務のムダを徹底的になくすことが求められていました。しかし、課長にはより高い視座と広い視野で、自部門(課)全体に影響を及ぼす問題を発見し、改善することが求められます。
業務プロセスの分解、再構成を通じて、持続的に人時生産性を高めることで部門全体の生産性向上につなげるのが課長の仕事です。
問題発見のための6つの視点 ①顧客視点 顧客は満足しているか、品質は顧客の要求を満たしているか、組織の姿勢は顧客の望むものと同じか、など顧客の視点で考えてみます。
②業務の視点 仕事がやりにくいと感じる時は、ムリやムダが必ずあります。ムリやムダがあるとミスも起こりやすくなります。業務の流れをもう一度検討しましょう。
③業務遂行者(同僚、取引先)など人の視点 仕事においては、取引先、同僚など、必ず業務の「相手」が存在します。相手の立場・視点に立って考えれば、問題点を容易に発見することが可能です。
④財務の視点 お金がきちんとマネジメントされているか、浪費されていないか、を考えます。
⑤組織目標の視点 仕事は組織の一員として達成していくものです。自分が置かれている組織の目標と照らし合わせ、改善点を見つけてみましょう。
⑥比較の視点 他の組織では?他業界では?他国では?など、比較の視点で考えます。
自部門に関するリスクを認識し、対策を練る ~業務のマネジメント
管理職がすべきリスク管理とは ①リスクの予測と評価 顕在化が想定されるリスクの洗い出しとそれらへの対応の優先順位をつける
②リスク顕在化時の対応 リスク顕在化時の初動を決定するとともに、実際に動けるようにする
③リスクが顕在化しない仕組みづくり ルール策定と徹底できる組織をつくる 自身の業務上のリスクだけでなく、部下の業務上のリスクも洗い出したうえでチーム全体の対応を検討しておく必要があるのは、係長も課長も同じです。
しかし、業務改善と同様に課長に求められているのは「より高い視座と広い視野」に立ったリスク管理です。特に、労務管理や個人情報の管理など、法令に則った対応が求められる項目については、最新の知識を踏まえたうえで対策を講じなければなりません。
人が育つ制度・仕組みを整える ~人のマネジメント
人材育成の基本はOJTです。
自らの判断・責任のもとに行動できる人材、広い視野で物事を捉え、自らの責務を理解し、柔軟に変化に対応できる人材を育成するためには、「戦略的なOJT教育」が欠かせません。
OJT担当者として新人につくのは中堅から係長クラスまでという組織がほとんどです。課長になったら、これまでの部下指導の経験を活かし、人材育成の「プロデューサー」として部下の自立と戦力化を促進するOJTの仕組み作りに携わることが仕事となります。
プロデューサーとして戦略的なOJT教育を行うためのポイント ①到達目標を定める まずは組織人材として求められる中長期的目標 (1年、3年、5年)を決めます。そのうえで、その実現に向けての短期的な目標 (1週間、1カ月、3カ月、6カ月)を、OJT担当者や部下本人と相談して決めます。短期的な目標については、重点課題に的を絞り、基礎スキルを徹底的に体得させるようにするとよいでしょう。
②育成計画を策定する 育成の基本は「計画的」であることです。到達目標と現状を踏まえ、どのような職務経験を通じて何のスキルを身につけさせ、どのようにして部下の能力向上を実現させるか考えたうえで、効果的なOJTができる計画を立てます。また、計画した仕事をタスクに落とし込み、きちんと部下に明示していくことも重要です。
③指導方法を検討する ただでさえ忙しい先輩社員が自分の仕事に加えてOJT担当者になると、仕事や時間といった物理的負担はもちろん、精神的な負担も増えます。担当者一人に任せきりにせず、教える内容によっては他の先輩社員にも指導を依頼できるか検討すべきです。また、新人が複数人いる場合は、自ら講師役となりミニ研修のようなものを開催したりするのもよいでしょう。
課長が担う重要な7つの心構え
数ある役職のなかでも中間に位置する課長には、果たすべき重要な心構えが大きく分類して7つあります。ここでは、それぞれ見ていきましょう。
課をまとめる存在として役割を全うする
課長は、企業内における課をまとめあげる役職です。多くの社員やプロジェクトと向き合ったり携わります。
また、社外との重要なやり取りも課長の役割の1つです。取引先との間で会議や交渉を行います。
その他にも、他の課長とコミュニケーションをとって連携や進捗の報告などを行うことも大切です。
課長は、部長や主任よりも多くの部下を抱えています。 もし、自分の課で問題が発生した場合、責任をとって然るべき対応をするのは課長の役割です。
部下たちがそれぞれの能力を発揮できるように課長が自らの役割を全うする姿は、多くの社員にとって頼りがいのある存在となるでしょう。
課が向かっていく方向を示す
どの企業も、形は違ってもそれぞれ理想とする成長や発展の姿があります。 企業の成長や発展には、会社全体で効率よく動いていくことが大切です。
しかし、多くの社員を抱える企業の場合、目標のために細かく指示を出していくことが難しくなるかもしれません。 そのため、課長は上司に代わって、自分の課が成し遂げたい目標を提示し、そして実行させる役割があります。
企業内で目標を立てる方法は、大きく分けて2つあります。 1つは、課をまとめあげる課長自ら目標を立てるトップダウン方式です。
もう1つの方法は、部下たちが目標を考えるボトムアップ方式と呼ばれます。 目標を考える経緯は異なりますが、最終的に決定するのは課長です。
部下が無理なく働ける環境作りを考える
会社の成長や発展のためには、それぞれの社員が能力を発揮することが大切です。 社員たちが本領発揮できるように、上司である課長はマネジメントを行います。
勤怠や進捗の管理をして、課の現状を常に詳しく把握します。 また、社員たちが能力を発揮するために重要なモチベーションに対するアプローチも、課長の役割です。
部下たちの様子を伺いながら、必要な際にはアシストやケアを行ってあげることで、モチベーションの維持や向上が期待できます。
部下たちの成長を促す
企業が大きく発展していくことは、社員の成長と同じような意味合いがあります。 社員たちがスキルアップしていけば、企業もより大きく発展していけるでしょう。
部下たちの成長は、上司の役割です。 課長は、部下たちに必要な教育や指導を行い、成長を促しましょう。
スキルアップしていけば、社員たちも仕事に対する達成感がより感じられるようになるはずです。 社員の成長には、実際に業務を行う環境下で合わせて指導を行うOJT研修が効果的だとされています。
その他にも、1on1や効果的な研修方法を採用してみましょう。
部下の能力を正確に把握する
まだ経験のない新入社員と入社してから年数がたっている社員とでは、能力や仕事の理解度には大きな違いがあります。 その他、同じような経験数の社員でも、細かい部分で能力が違う部分はあるでしょう。
社員一人ひとりが能力を発揮するためには、最適な業務を行ってもらうことが大切です。 まだ経験の浅い社員に、不相応に大変な業務を任せると、業務量や仕事の難しさ、プレッシャーなどに押しつぶされてしまうかもしれません。
だからと言って、簡単過ぎる業務では、社員の成長が期待できず、モチベーションの低下を招く恐れがあります。 社員たちの能力を正確に把握して、業務を振り分けましょう。
部下の実績に対して最適な評価をする
部下の成長やモチベーションの向上のためには、最適な評価を行うことも大切です。 確かな実績のある部下に対して、正当な評価を行い、昇給や昇進について考えましょう。
課長は、結果を出してくれた社員のことを自分の上司に伝えて、昇進の手助けができます。
部下との信頼関係を大切にする
上司と部下との間には、良好な信頼関係を築くべきです。 良好な信頼関係があれば、業務のなかでのやり取りがスムーズになりますし、働きやすい環境作りやモチベーションの維持または向上などにつながるでしょう。
上司と部下との信頼関係は、仕事のなかだけのものだけではありません。 プライベートの話など、仕事の他にも頼りたくなるような上司を目指しましょう。
しかし過度なおせっかいは、余計に感じられるかもしれませんので注意が必要です。
理想の課長を目指すためにポイントを理解しよう
課長は、数ある企業内の役職のなかでも、中間に位置しています。それゆえに、他の役職にはないような役割やストレスもあるでしょう。
しかし、課長になると、係長では追いつけなくなるほどの年収が上がります。
経営と従業員の板挟みになるマネージャーですが、やりがいが持てる仕事になります。
ぜひ日々の業務にも活かして、自身のスキルアップを目指していきましょう。
部下に対してだけでなく、自分へのマネジメントも重要になってきます。課長の役職は、自分の今後のキャリアアップにもつながる重要なポジションです。
自分のキャリアアップのためにも、目の前のことに対して確実に取り組んでいくことが大切です。
企業が求める課長職は、間違いなく未来の企業づくりに必要な人物であること。そこに任命されたあなたは、すでにその資質とスキルを持ち合わせているのです。
ぜひ、自分軸を大事にもった課長職を全うしていきましょう。